とんかつ通信とんかつ通信

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とんかつ通信(不定期刊行物) 第15号

編集・発行すずや店主(軽薄?敬白?)

<はじめに>

本日は当「すずや」をお選びくださり、誠にありがとうございました。心から厚く御礼申し上げます。
 ご満足頂けたか心配です。どうかお気づきの点はお気軽にレジ係までお申し出下さい。皆様のご要望に少しでもお応えしたく何卒よろしくお願いいたします。

<最近思うこと>〜サービスとは何なのだろうか?〜

もう、遥か昔の話になりますが、わが国に「すかいらーく」に代表されるいわゆるファミレスが登場した頃、その店に見学に行ってカルチャーショックにあったことを思い出します。
 従業員の人達が皆マニュアルに従って「全員同じサービスをする」(挨拶・用語は勿論、お辞儀の仕方まで統一されている)、これは大変な驚きでした。
 その頃当店ではサービス、調理のレベルは人によって全くバラバラでした。基準がなかったのです。
 「よく気が利く/利かない」「手が早い/遅い」が唯一の判断基準でした(これは勿論今でも大切な適正ですが)。
 当時まさか「一定のレベルに統一できる・・・」等とは考えもしなかった。

  それから25年、今や他の業界に至るまでマニュアルの導入は当たり前の前提になりました。
 これはマクドナルドをはじめとした飲食業界が他産業にまで大きく影響を与えた偉大な功績とも言われています。
 かくしてよく言えば「ムラなく統一されたサービス」、悪く言えば「画一的なサービス」は広く世に浸透しています。
 そのような状況の下、恥ずかしながら当店では未だに「統一すら出来ていない」状態です。まず一度この「統一されたレベル」を達成したいと思います。
 そこへ行ってようやく次の段階に進めると思っています。

 しかし、上には上がいるもの、最近の体験をお伝えしたいと思います。
 南大沢店で店を並べる、主に都内でイタリアンレストランを中心に展開する"スティルフーズ"という会社の新宿アイランドタワーにあるお店での話です。
 近く「リニューアルオープンする」と聞いていたので、夜通りかかった折、立ち寄ってみようと思いました。
 地下一階の店に向かって階段を降りていくと、丁度中から従業員さんが出てきて外看板スタンドのコンセントを抜き店頭照明を消していました。
 時計を見ると午後九時、「残念、オーダーストップか」と思いましたが、せっかく来たので店頭のメニューや店内の様子だけでも覗いて行こうと思い、入り口まで行きました。
 確かに9:30オーダーストップ、10:00閉店と記述されていました。
 しばらく外で、メニューを見ていると中から女性従業員(あとで聞いたところアルバイトさん)の方が出てきて、「よろしければどうぞお入りください」と言うのです。「えっ!もう終わっちゃたのではないの?」と聞くと「ええ、一応・・・」「でも構いません」「まだ、お客様がいらっしゃいますので」と、扉を開いて店内を見せるのです。「じゃあチョッとだけ・・・」と遠慮がちに店に入りました。

 客としてみればとても嬉しいわけですが、同業者としてはショックでした。この出来事だけでも「すずやではきっとあり得ないことだ」と思いました。
 ところが更に驚きは続きました。席まで案内される途中すれ違った女子従業員がニッコリと「いらっしゃいませ」と言いました。「あれ?どこかで見たことあるかな?」と思いながら思い出せずに席につきました。
 すると、先ほどすれ違った女性が席まで来て「こんにち、失礼ですがすずやの社長さんですよね」と聞くのです。「あれ、やはりどこかでお会いしましたっけ」と問い返すと「ええ、二年前の南大沢のオープンの時、隣のアランチョでアルバイトしていまして、そのときお見かけしました」と言われました。

 顔や名前を憶えてくれていたことは客としてはとてもとても嬉しいことです。しかし、同業者としてまたまた大ショック、アルバイトさんが、しかも二年前に見かけた(お客様の)顔を覚えていて挨拶に来てくれた・・・、こんな事は当店では本当にあり得ない事と思います(申し訳ありません)。
 一体どういう教育をしているのだろう?等と考え込んでいると、次にまたまた驚くことが起こりました。オーダーストップがとっくに過ぎ、本日最後の客としてやっと入れてもらえたと思っていたのですが、何とまたまたその後からお客様が入ってきたのです。
 女性客4名のグループ、もう既にどこかで食事をしてきたのか皆声が弾んでいます。
 お店の人達とのやりとりを聞いていると、(女性客)「ゴメンなさーい、こんな遅くに」、(男性従業員)「とんでもありません、今日はお見えにならないなー、なんて思っていたところですよ」(お互いに笑い)「うっそー、私たちのこと覚えているのー?」「勿論です、先週のオープンの日、確か同じメンバーであちらのお席で・・・」「イヤダー、本当に覚えている(笑い)・・・」「チョッと一杯ワイン飲むだけ・・・」、「どうぞどうぞお好きなものをごゆっくり」・・・これでは本当にかなわない、と思いました。

 ホストクラブでならまだしも、普通のレストランです。お客様が席に着いただけで、まだオーダーもしない内にすっかり上機嫌になっています。
 サービスとは「お客様に心から満足していただくこと」と思います。まず、マニュアルを徹底できれば・・・等と考えてきましたが、その対極に別のゴールもあったのです。それは"ハートと会話"でした。これから「すずや」も頑張っていきます。どうお見守りください。

 

<とんかつ屋が選んだとんかつ屋>〜とんかつ かつ英〜

すずやはとんかつは勿論、ごはん、キャベツ、漬け物、水、お茶、調味料までとことんこだわっていきたいと考えています。それらに関する情報はきちんとアンテナを張っているつもりです。
 先日も"上州(群馬県方面)榛名、梅の郷 とことん豚"という銘柄豚の産地、生産者の方を訪ねて高崎から前橋、安中方面を旅して参りました。  ご案内をお願いした地元の方が「それはそれは美味しいとんかつ屋さんがあるよ」と教えてくれ、立ち寄ったのが今回ご紹介する「とんかつ かつ英(ひで)」(0273-63-9900)という、高崎の駅から少し離れた市外の一角にある一軒家のお店です。

 ご主人の北原さんは一徹の職人さんと言うより笑顔の優しい哲学者のような方で、物静かに「とんかつと言うより、栄養あふれる豚肉の美味しさを知ってもらいたい」とおっしゃいます。
 低い温度のコーン油で分厚い豚肉をゆっくりと揚げたとてもジューシーな"ロースかつ定食"(300g)1450円は、とんかつファンならたまらない逸品、なぜかぺろっと食べれてしまいます。
 そして何より他店ででは絶対に味わう事の出来ないと思う隠れ人気メニューは“しょうが焼き”です。厚さ5cmはあろうかというリブロース、しかも一頭から二人分しか取れない部分だけという贅沢さで、柔らかな肉芯までマイルドな甘辛いタレがしみ込み感動ものです!

 只、残念なことに九月一杯で閉店とのこと。再開が待ち望まれます。

第15号 –完–
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