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とんかつ通信(不定期刊行物) 第4号

編集・発行すずや店主(軽薄?敬白?)

<はじめに>

皆様こんにちは。いつも当店をご利用下さり誠にありがとうございます。この時代に星の数ほどある飲食店の中から、すずやを選んでくだっさったことに心から感謝申し上げます。
 皆様の期待を裏切らぬように頑張って参ります。どうぞ宜しくお願いいたします。

<最近思うこと>〜晴れの場と袈(け)の場〜

「あっという間に1年が過ぎ」(世代に関わらずこう思っている人は以外と多いのではないかと思います)早平成も11年目、我々の世代(?)は「平成はあくまで昭和の延長・・」と言う意識から抜け出しておりませんでしたが、「10年一昔」、もう「昭和時代は・・」と言う癖を付けていかなくてはと思っています。
 そんな中でいわゆる昔の話もナンセンスかとは思いますが、つい昔のことが懐かしく思い出される事もあります。
 
 ちょっと昔はよく「お正月くらい・・・」とか「正月気分が抜けなくて・・・」等と言ったものですが、年々と”正月”と認識する期間が短くなってきたように思うのは、果たして私だけでしょうか?
 もっとも去年や今年のように、戦後生まれの我々が初めて体験する”未曾有の大不況下”にあっては、「明日は我が身か」と思えば正月だからと言っておちおちしているわけにもいきません。
 しかし、思えばあのバブル崩壊以降、年を追うごとに精神的にゆとりが持ちにくい、更に世知がない時代へとどんどんと進んでいるように思えてなりません。本当にこのままで良いんでしょうか?

 一方、(こちらはある程度肯定的な見方をする人もおりますが)正月気分が盛り上がらなかったもう一つの理由に、年が明けたからといって晴れ晴れしい気持ちにあらたまらない、いわば晴れの場の日常化、フォーマルのカジュアル化 、そのまた反対の日常の晴れの場化と言うもう一つの側面があるような気がしてなりません。
 小売業の元旦営業は当たり前になり、松飾り、国旗掲揚などは珍しいほどになりました。
 普段の生活の中でも、いわゆる”晴れの場”を迎える機会が減ってきたような気がします。そう言えばもう久しく海外旅行に出発の際、誰も飛行場に見送りには来ませんし、結婚披露宴が近くのスナックで開かれても親戚も何とも言いません。
 タキシードを着てラーメンやさんに行ったって振り返る人もなく、一流都市ホテルに短パン・Tシャツで行っても、靴と靴下さえ履いていれば咎められることもまずありません。
 何にでも敷居が低くなって、楽と言えば楽ですが、マナーという点と用途にあったスタイルこそ世界の中でお洒落と言われている点を考えると、止められない、咎められない事は”何でもあり”、そんな時代になって来ているように思います。

 緊張感に全く触れる機会が無いというのも何か寂しい気がしてなりません・・・。

 

<とんかつ屋が選んだとんかつ屋>〜トンカツの店「豚珍館」〜

前回推薦させていただいた自由が丘にある「丸栄」に行かれた方はいかがでしたか?
 カウンターに座って、実直そうな親爺さんの淡々とした仕事さばきを見ながら、その衣に覆われたジューシーそうな肉の旨みを想像し、料理を待つ間に思わず口の中に唾液がにじみ出てきた方もいらっしゃるのではないかと思います。

 どんな商売でも創業者やオーナーのこだわりというものに触れた瞬間 、不思議な共感がこみ上げてくる場合があるのではないでしょうか?それが店探しの楽しみの一つです。

 さて今回は同じ新宿にありながら、頑固なまでの親爺さん(この店のホールに居る人)のこだわり(と言うか意地のようなもの)を感じさせられる貴重な一軒、西口の「トンカツの店 豚珍館」をご紹介したいと思います。
 平日のランチ時ともなると2階のこの店に入る為のお客様の列が、階段から1階の外にまで及ぶ繁盛店です。

 人からの評判を聞きつけ初めて訪ねた4年ほど前、並ぶ階段の壁面に「この位置だと15分」とか「ここから5分」等という表示があり「行列が当たり前の店だけあってすごく親切だ」と、いたく感激した覚えがありました。
 その上帰り際に、店の1階入り口の脇に「空卓」「満卓」とあたかもラブホテルのようなランプが点灯する看板を見つけ、「ここまで徹底することは素晴らしい」と思いました。(この部分は早とちりで、後日2度目に行った時にそれは同じビルの3階にある雀荘のサインであることを知りました・・・これはあくまで話の種です。)
 2階に上がり手で引き戸を開けると、そこにもうレジがあります。右手に小上がりの座敷20席とテーブルが8席、左手にカウンター4席といったとても狭い店ですが、いつもお客様は一杯です。

 ここの繁盛の秘訣はズバリ安さ!トンカツの店と謳ってはおりますがこんなにトンカツの注文の少ない店も珍しいのではと思います。
 それもそのはず、普通トンカツと言って思い浮かべる商品はロースカツやヒレカツですが、ここでは「紙のようにうすい 紙カツ(僕の意見で書いたのではありません)600円」を除いてそれらが皆1000円以上するのです。
 もっとも当店の様に新宿のトンカツ屋では、トンカツと言えば1000円以上するのが当たり前のようですが、この店では他のメニューがあまりにも魅力的で安いだけに、ついつい他のメニューを選んでしまうのだと思います。

 エビセット(エビフライとカニコロッケ)730円、メンチセット(メンチカツと串カツ)730円、カニセット(カニコロとメンチカツ)700円等々です。
 メニューは全部で17から18種類、イカフライ530円からトンカツを除く13種類ほどが800円以下に揃っています。そして提供も迅速です。
 ご飯、味噌汁(かすかな豚汁)のお替わりも自由、その上これらの価格は消費税込みなのです。今時ほんとに消費者の味方、客として行ったときに多少は気になる点もありますが、安くて美味ければ気になることも気にならない、そんな私達の本音に訴えかけるような、安さを基本とした立派な方針の店だと思います。

 そうそう、そう言えば、肝心の親爺さんのこだわりの部分ですが、言うまでもなく一つには安さです。そしてもう一つは、デシャップ(業界用語で、キッチンとホールの境にある台のことで、料理の出てくるところ)が持ち場の親爺さんが、一つ一つの料理を全て検質チェックしているその素晴らしい姿勢です。
 忙しく次から次へと料理が出てくる中で「ほら、こんな火の通り(=揚げ時間が足りないの意)じゃ出せないよ!」「皿を斜めに出すから、せっかく盛ったキャベツが崩れちゃうじゃねーか、盛りなおせ!」と文句の言いっ放しです。
 決して安いから、お客が一杯来るからと妥協を許してないのです。当たり前のことのようですが、現代ではなかなか難しい、でもここはきちっとやっています。頑固な親爺さんのいる店は安心ですね・・・。

 当店も学ぶべき点が多々あると思いました。

*「トンカツの店 豚珍館」 新宿区西新宿1-13-6 電話03-3348-5774 11時〜23時(15時−17時クローズ)

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<すずやが今悩んでいること>

創業以来45年続けてきた、キリンビール一筋をアサヒスーパードライに換えても良いだろうか・・・?

 何だそんなことを悩んでいるのかと言われそうですが、(トンカツ屋はトンカツがうまけりゃいいんだよと良く言われます)結構真剣に考えています。
 換えたい理由はスーパードライの味の方がカツなどの揚げ物に良く合うような気がするから(いわゆるキレを感じるから)、です。悩む理由は、「なぜ換えたんだ」と叱られるような気がするからです。皆様はどう思われますか?

       
第4号 –完–
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