とんかつ通信とんかつ通信

  1. トップページ 
  2. >
  3. とんかつ通信 
  4. >
  5.  創刊号

とんかつ通信(不定期刊行物) 創刊号

編集・発行すずや店主(軽薄?敬白?)

<はじめに>

皆様こんにちは。いつも当店をご利用下さり誠にありがとうございます。
桜の季節もあっと言う間に終わり、何か寂しいような、でもホッとしたような複雑な感じの今日この頃です。本格的な春、待ちどうしかったです。でも春を迎えたこの何とも言えない喜びの陰に、実は長がーい、寒むーい冬があったことも忘れてはなりません。

 春は入社、入学のシーズンでもあります。新入生でない私も毎年春が来るたびに、心新たにスタートを切り直そうと思っています。今年も思いました。(思うだけは簡単なのですが)
再スタートは何度切っても誰にも咎められないことですから・・・。いかがですか?

 さて、以前よりずっと(自分では)懸案であった手前勝手な『とんかつ通信』、いよいよ創刊の運びとなりました。
 「字は下手だし、もちろん文章も書いたことがない・・・」 昨年のお正月に「とんかつ茶づけ」と一緒に何かお客様にお伝え出来るものはないか、と新聞発行を思い立っていたのですが、何か新しいことを始めるのが苦手なものですから、「忙しい、忙しい」と自分で理由を付けて、結局始めるまでに1年以上もかかってしまいました。これからもマイペースで(?)続けていきたいと思いますのでどうぞ宜しくお願いいたします。

<料理の種明かし>〜「とんかつ」について〜

第一回は、とんかつについてその知るところをお伝えしたいと思います。
 
 すずやは今でこそ来店なさるお客様の二人に一人の方が「とんかつ茶づけ」を召し上がって下さりますが、創業の1953年当時からつい10年程前までの約30年間は、幅広くメニューを用意したいわゆる洋食の店でした。
 とんかつやコロッケといった揚げ物のお料理は、例えばカレーライスと同じように″洋食″という日本独特のジャンルの中で多くの人々に身近に親しまれ、生き続けて来たのだと思います。(“洋食”の定義はこれ又難しいものですが、ご飯に良く合う昭和時代の家庭料理のこと、と、取りあえず自己流に注釈させていただきます)

 しかし、あまりにも身近であったせいなのか改まって、とんかつは何料理なのか、西洋料理か、それとも和食の一種なのか、誰が発明したのか、なぜとんかつとの付け合わせにはキャベツが合うのか、誰が決めたのか・・・等々素朴な疑問を持ち、この新聞を書くために調べ始めてみたのですが、正確な答えはいくら探してみても見つかりませんでした。皆、推測の域を出ていません。

 なんだかんだと言っても我が国の食肉品類中需要の第一位をしめる豚肉を使用し、その数ある調理方法の中でも最もポピュラーな料理とんかつ ・・・、今や寿司、天ぷら、すき焼きに次いで国際的になりつつあるとんかつ ・・・しかしそのルーツは全くと言って良いほど正確な情報がないのです。(ご存じの方は是非お教え願います。しかしこれではとんかつ通信の創刊号記事としてあまりにも恥ずかしい・・私は反省しています。お許し下さい)
 
 とはいえ、確実に言えることが二つ分かりました。

  1. とんかつは我が国独特の発明料理であること
    日本に導入された西洋料理が独特にアレンジされたものと思われる。"ポーク・カツレツ"と言う別名のルーツと思えるフランス料理のコートレットと言う調理法は、フライパンに薄く引いた油で子牛肉などを焼くのですが、決してとんかつのように深い油で揚げるわけではありません)

  2. 発明されたのは明治時代であること かの永井荷風が明治44年、銀座について綴ったエッセイに登場しています・・「或る人は、帝国ホテルの西洋料理よりもむしろ露天の立ち食いとんかつのオクビをかぎたいといった。露店で食う豚の油揚げは、既に西洋趣味を脱却して、しかも従来の 天麩羅と抵触することなく、更に別種の新しきものになり得ているからだ。カステラや南蛮が長崎を経て内地に進み入り、遂に渾然たる日本的のものになったと同一の実例であろう」と。
 

<終わりに>〜正しい情報を伝えていきたい〜

今、世の中でもあらゆる分野で「情報を公開せよ」「ディスクローズが不可欠だ」と声があがっています。
 私達の生活の根底に関わる政治や行政、また大切な資産を預かる金融業などではむしろその取り組みが遅すぎた位だと思います。
 
 通常何も隠すことのないような私達飲食業ですが、考えようによっては直接お客様の健康や暮らしに密接に関わっているわけです。すずやとしてもこの重責を自覚して今後はこの新聞を通じて、料理や商品に関する成分、使用食材の詳細や、調理方法の解説等、お客様の純粋な疑問にはこちらが先回りして正確な情報を提供していきたいと思っています。

 そのような背景において創刊したこのとんかつ通信をどうぞ今後とも宜しくお願いいたします。

 

<とんかつ屋が選んだとんかつ屋>〜とんき(目黒駅西口)〜

「魅力のある飲食店とはどのような店か」という永遠のテーマを探求するために、私は様々な飲食店を食べ歩くのですが、そんな中から「こんなに良い店なら是非人にも教えてあげたい」と思うお店を10軒に一軒位の割合で発見することが出来ます。
 巷にはグルメガイドの情報が氾濫していて、皆様も「もうたくさん」と思われるかもしれませんが、同業者としての視点から「こんなお店がおすすめです」 をお伝えしたいと思います。

*「とんき」目黒駅西口
 あまりにも有名でその名をご存じの方も多いと思います。中野や自由が丘などにも同名のお店がありますが、これらはいわゆる暖簾分けのお店のようです。

 都内に数あるとんかつ屋の中から最初に選んだのは"目黒の"とんきです。
 入り口の白い暖簾をくぐり、白木フレームのガラス戸をあけると「いらっしゃい!」(僕にはそう聞こえます)、店内は磨き込まれた(おそらく苛性ソーダを使って毎日磨き上げています)白木のカウンター・・・、なんだかこう説明するとお寿司屋さんみたいですね、そうなんですこのお店の推薦理由の第一は、清潔な状態が絶えず保たれていることです。(これを業界用語で言うとクリンリネスと言います) 「なーんだ、うまいんじゃないのか」、確かにまあおいしくもあり、1650円の価格にはお値打ち感もあります。
 しかし、それはとんかつという商品に対してではなくて、この“店がいつ行っても徹底して清潔に保たれていること”の素晴らしさにお客様が惹かれて、その価値を知らずの内に感じ取っているのだと思います。
 
 オープンキッチンのとんかつ屋ですから同じ白木を使っていても油を使わない寿司屋さんなどとは比べようもないほど清潔を維持することは大変だと思います。
 普通だったら、たった一日でも天井や、照明器具がまずベタベタになってしまいます。見えないところでかなりの努力をなさっている事は間違いないと思います。本当にすばらしいお店です。

*「とんき」 JR山手線・東京メトロ南北線・東急目黒線「目黒駅」下車徒歩3分 目黒駅から140m 予算2000円 火・第三月曜定休 03-3491-9928
目黒「とんき」の外部(食べログ)ページはこちらをクリックして下さい
 ※新しいページが開きます

       
創刊号 –完–
  1. トップページ 
  2. >
  3. とんかつ通信 
  4. >
  5.  創刊号